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【命の尊さ】羊の屠殺を見ながら思う

2009年08月19日 (水) | カテゴリ:'09モンゴルの旅-地球探検隊

※このページには、羊の屠殺写真もあります。
 つまり、羊の解剖写真を、見たくない人は、次のページへ

俺たちがいる河の中州へ、一頭の羊が運ばれてきた。
今から、ホルホグ料理のために、屠殺される。

羊は馬から降ろされ、小さなナイフを片手に持っている
現地のお父さんのところに、運ばれる。

今から、羊を屠殺するのだ。

羊を仰向けに寝かせ、足を押さえる。
お父さんが、羊のお腹に、ナイフを入れる。
15センチほど、開いただろうか。
羊は、暴れない。

お父さんは、片手をその切り口に突っ込み、
羊の喉近くまで、手を入れていく。
羊はほとんど暴れないが、目が大きく見開いていた。
数秒後、おそらく動脈かなにかを、手でちぎったのだろう。
お父さんは、手を抜いた。

羊は、少しだけ足を動かし、口から少しだけ
空気が漏れるような音を出す。
お父さんが、羊の口を押さえる。

だんだんと、羊は動かなくなり、
目の黒目が消えていき、その命の炎が消えた。

なぜ、羊は暴れないのだろう。
自分の運命を知っているのか。
少しだけ、そんなことを聞いていたが、実際にそうだった。

命が消える瞬間。
我々が、生きるために、食べるために、
そのための命が消える瞬間だった。
命をいただく、というのは、こういうことだ。


さらに、作業は進む。
皮を綺麗に剥がしていく。
そして、大地に羊の皮を広げる。
これは、羊の血が大地に落ちないようにということらしい。

内臓を取り出し、血をすくい出していく。
内臓や血が出て来たら、ハエがたくさん寄ってきた。
馬糞を燃やし、その煙で追い払いながら、
作業を続けていった。

今回は、ホルホグ料理で肉の部分だけを調理するが、
実際は、内臓も利用されるし、血も腸詰めのソーセージになるのだ。
肉も、食べやすいサイズにして、完全にさばいていった。


もうひとつ、忘れられない映像がある。
そして、忘れられない感覚がある。

屠殺された羊の目だ。
当然、生きていた時の黒目に、黄色がかった瞳は、
その光を失っていた。

その目は、宝石やビー玉のようであり、
エメラルドグリーンの色をしているのだ。

思わず、座り込んで、覗き込んでしまう。
吸い込まれそうな、神秘的なエメラルドグリーン。
その表現がしっくりくる。

もちろん、死んでしまっているのだが、
そのエメラルドグリーンの目は、
人の心を映し出して、見透かされているようだった。

俺は、羊の肉をさばいている作業を見るより、
地面に横たわっている羊の目に釘付けだった。

その目にもっと近づこうと動くと、
右肩に激しい痛みが走った。

そう。肩が痛いのだ。
その時、感じた「生きている」ということ。

痛いって、生きてるんだ。

痛みって、生きているから感じるんだ。

心も身体も、痛みを感じるということは、
生きている証しである。

今、身体が痛いのは、過去の痛みではなくて、
今の痛みであり、
今、心が苦しいとしたら、
それも過去の痛みではなく、今の苦しみなのだ。

「人って常に、今を生きているんだよな。」

自分が、旅の前、何度も出てきたキーワード「今を生きる」。
それが、肩に手を当てながら、このエメラルドグリーンの目を
覗き込んでいる時に、はっきりと感じたのだった。


生命をいただき 生きている

天から授かった命は 命に生かされている


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 寺田 直樹(てらだ なおき)
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